上記画像はS660ダンパーの試作品、テスト品です。
製品とは異なりますのでご了承ください。
S660の
足回りについて深い話しと、
発売までの長い期間お待たせ致して
申し訳ありません。
今回はS660のダンパーKITを開発するにあたり、
長い期間を要し開発製作過程にいて、いまだに発売、納期をお待ち頂いている
S660ユーザー様に誠にお詫び申し上げます。
間もなく完成、発売致します。
誠に長らくお待たせいたしまして申し訳ありませんでした。
ここからは、S660のサスペンション開発について、深いお話を致します。
興味のない方は「スルー」して下さい。
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S660 のダンパーKITの開発にあたり
通常の構造ではS660のダンパーは
車高を少なくとも40から50mm落とす事を前提で
考えた場合、通常の車高調では
ダンパーの機能しない事の認識から始まります。
(ノーマル車高から20mm程度のダウン量でしたら問題なく機能します。)
・ストラット式
・ナックルと車体までの寸法が少ない。
・ナックルにショックを差し込む形状、かつその直径が小さい。
上記より設計がシビアになると予測しました。
・ストラットであると言う事は下記の3点しかショックの形式を選択できない。
倒立のシングルチューブ
正立のシングルチューブ
正立のツインチューブ
この中で正立式のシングルチューブが封入ガス圧が異常に高くなり、
性能維持を考えるともってのほかなのでNG。
もし正立の場合、ピストンロッド径は21mmは強度保持で必要です。
ナックルの差し込み部の直径44mmを前提に考えると
ピストン径40mmではパイプ肉厚2mmしか取れませんから、
ナックルを締め付けるとパイプが変形し、
スライド出来なくなってしまう事から、
ケース厚はもっと厚いか、カートリッジの2重構造に思います。
そうなるとピストン径は35mmくらいになると想定されるのですが、
ガス圧は減衰力/(ピストン面積ーロッド面積)で決まるため、
ロッドが太い方が高いガス圧を入れなくてはなりません。
例えば、ドンと言う入力のために80kくらいの減衰力は必要なのですが、
上記の35mmピストン、21mmロッドの場合
964mm2/346mm2で2.78を減衰80で割りますから、
80/2.78=28.7kのガス圧が最低限必要で
それより低いガス圧を入れた場合、
ドンと言う入力の際に一気に抜けてしまいます。
ツインチューブは、オイルとガスを機械的に分離していないので、
ハード走行時にオイルとガスが混じり減衰が出ない現象、キャビテーションを起こすのでNG。
・残るは倒立のシングルチューブですが寸法上の問題があります。
ナックルの差し込みから車体までの寸法が小さいため、
ナックルまででショックを収めると(現在発売されている倒立式ショック)
ストロークがまともに取れません。
例えば、
今販売されているS660のダンパーの設定車高が35mmダウンで
5kのバネレートの場合は下記のとおりです。
5キロのばねで、車高を35mm落とした場合、
計算上どんなに多くてもストロークは75mmしか取れません。
バンプストップ長さが30mmだとすると
残りストロークは45mmで、
S660に5Kレートのばねの場合、1Gストロークは訳40mmですから、
残りストロークは5mmしかなくなってしまいます。
ストロークに対しケース長は最低でも100mmは必要です。
100mmと言え、倒立のアウターを差し込む部分の肉厚は考慮されていませんから、
実際にはさらにケース寸法が大きくなり、ストロークが削られます。
ストロークを稼ぐためには下記の解決法があります。
・ストロークアップピロアッパーにする
この場合、ボンネットのと距離がありますから、
やれたとしても20mm程度で、かつネガキャンをつける事が出来ないデメリットがありますからNG。
ミッドシップはアンダーステア回避のために、
フロントのネガキャンは多くつけたいです。
・ガス室を減らす
とは言え上記計算時でストローク方向に30mmしかなく、
これ以上減らすのはガス室の、ストロークによるガス圧変動が大きくなるため、
この方法も基本NGです。
・フタなどの寸法を薄くする。
必要な強度を確保するため大きくは寸法を変えられませんから、
根本解決にはなりません。
・ショックを純正のようにナックルを貫通させる。
この場合、ナックルの貫通穴が44mmしかないため、
倒立構造の場合、一般的に一番小径な36mmピストンを使用したとしても、
必要強度を保ったアウターケースを作ることはできないため、
S660専用のピストンバルブ、シリンダーなどを作るしかなくとても大変。
現実的に減衰調整ダンパーはさらにケース長が長くなる傾向
ニードル減衰調整のダンパーは
フリュードを漏らすための穴が必要なのと、
ニードルをロッドに通すため、ピストンを固定するネジが大きくなります。
それらによって、私たちの非調整より、15mmほどはピストン部の大きさが大きくなり、
ガス室30mmを限定するなら、通常の調整式ダンパーは、
さらにケース長が長くなり、ストロークは更に15mmほど減るはずです。
(となると1Gでバンプラバーに接触となります)
また、穴が大きなシムは小さなシムより、シムの開き具合は急激になりますので
減衰もバタバタしがちです。
これらの理由で減衰力非調整を選択しました。
しかし、それしか欠点の根本解決はできませんから、
今回は専用設計品を作ることにしました。
小さなピストンバルブとは言え、ツインチューブよりは大径ですし、
そもそもツインチューブはスポーツ走行には使用できない。
また、ストロークが取れない状況で、
大径バルブを使用したとしても意味がありません。
したがって専用のシングルチューブ倒立ストラットダンパーを作るしか、
高次元で性能を確保する事は出来ないと判断しました。
上記の条件を満たして
今回発売するM&M HONDA S660スポーツダンパーは、
車高を40~50mm下げてもストロークする、
あらゆる条件の路面変化に対応できる動く足回り。
加重移動や路面の状況変化を体感できる足回り。
乗り心地(路面からの突き上げ感)を損なわず、
スポーツ走行においてステアリングレスポンスを重視し
ブレーキングやコーナリング時に加重移動がスムーズに行える事を最大の条件で
妥協せず開発したS660だけの特別な専用設計で作られた
スペシャルダンパーが、間もなく発売です。
どうぞご期待ください。
上記S660のダンパー開発について、
「深いお話」を最後まで読んで頂きありがとうございました。
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